放課後の二人


それはプラントの希望ともコーディネイターの未来とも呼ばれていた


 肉体・知能ともにナチュラルをはるかに凌駕するコーディネイターだが、
何も問題がない訳ではない。
そう、世代を重ねるほど生殖能力が低くなるという
深刻な状況を抱えていた。
プラント評議会は、現在この問題を重視し、
事態改善への研究を最優先にすすめる政策を取っている、が
現在のところはかばかしい成果は
まだ現われていなかった。

 だが、まだまだ子供であるアスランにとって
そんなことにはまだ感心もなく…無理もない、
ここ月面都市「コペルニクス」とプラントは
遠く隔たる場所にあるのだ。
プラント評議員である父を持つアスランは
己の身分をかくしこの地へ留学していた、
そしてその幼年学校で出会った同じくコーディネイターの
キラ・ヤマト
この親友とアスランは今日は何をして遊ぶか
考えるだけが当面の問題だった。



「驚いたな、今日の授業…」
 学校からの帰り道、
それぞれにみな生徒達が口を開いている。
いつものようにアスランもキラと一緒に
歩きながら家路へ着こうとしていた。
「キラは知っていた?」

 この親友は、どこか控え目なところがあって
話しかけるのはいつもアスランの方が多かった。
かと言って彼は決して消極的で
大人しいだけの少年でもなく、ちゃんと
自分なりのしっかりとした意見も持ちあわせている。
ただ生まれながらの優しい性質と、
繊細な容姿がそこはかとなく物静かな
佇まいを醸し出しているのだ。
 アスランはそんな独特の雰囲気の彼が好きだ、
初めて会った時から惹かれていたと言ってもいい。

 今も静かに首を振るキラを見つめていると、
その伏し目勝ちの瞳に魅入られたように
目が離せなくなってしまう。

「そうだよな。まさか父さんと母さんが、
そ…そんな事をして僕達が産まれたなんて…」
 
想像すると頬が自然に赤くなる、
今日は性教育の授業があった。
彼らは初めて男女の性の営みと言うものを教えられたのだ。
でも…とアスランは思う。
男女の愛し方は分かったが、では男と男ではどうするのだろうか?
彼は、またチラと隣のキラを見る。 
己の好きなのはキラだ、キラ以外考えられない。
だがキラは自分と同性で…同性間のSEXは
今日の授業では教えてもらえなかった。

(次の授業で勉強するのかな?)

「ねえ、キラ…」
「なあにアスラン?」
 振り向いた親友を抱き寄せて
「キス…していい?」
「……。」

 キラは少し驚いたように目を開き、
回りを気にして見まわして、
人気のないことを確認すると、コクリと頷いた。
そして、二人はそっと口唇を重ねる。
触れるだけの幼いキスだった、
だがすでに何度かそれは経験していた。

アスランが、『好きだ』とキラに告白した時から、
そしてそれをキラが受け入れた時から
二人の間でキスは愛を確かめ合う行為となっていた。
己の腕の中の、キラの体温を感じて
アスランの股間が熱くなる。
(そうか…いままで何故かは分からなかったけど
この高まりはSEXするための性衝動ってヤツだったんだ。)

 でも自分の相手はキラ以外には考えられない、
女性との性交の仕方は分かったが
同性とはどう処理をしていいのか?

「ねえキラ…僕の家に来て。」
「今から…?」
「うん、今日習った事をやってみようよ。」
「でも…あれは…」
不安げな紫の瞳が揺れる。
「大丈夫さ、男同士だってきっと出来ると思うんだ。
だって僕が好きなのはキラだもの、
恋人同志はSEXするんだろう?
だったら僕はキラとする。」
「アスラン…」

 キラはまだ不安そうだったが、
強引なアスランに逆らえるはずもなく、
そのまま彼の家へつれていかれた。