幼き約束


「大丈夫…キラ?」
「うん…少し出血してるけど大した事ないと思う。」
 事が終って、脱ぎ捨てた服を身につけようと
立ちあがったキラは下半身の痛みに顔をしかめる。
「ごめんよ、つい…」
 アスランはすまなそうな顔で頭をかく。

「ひどいよアスラン…初めてなのに2回も
するなんて…僕まだ腰がガクガクしてる…」
「ごめん…あんまり君が可愛かったから
…つい夢中になってしまって…」
「はぁぁ、それにしても困ったなぁ。」
「なにが?」

 ポカンとするアスランに、
珍しくキラは苛立ったように言った。
「だって僕、女性の身体になってしまったんだよ!!
母さんや父さんに何て言えばいいの!?」
「だ、大丈夫さキラ! 服着ていれば分からないよ、
ちょっと大きめの上着なら胸だって目立たないし」
「う〜ん、そうかなぁ。」
 キラは己の胸に視線を落とす。

 確かにゆったりとした洋服の上からなら、
ぷっくりとした胸のふくらみも少女のようにまだ初々しく、
さほど目立たないだろう。
「そうそう、それに大人になれば俺がキラを
お嫁さんにするから何も心配ないよ。」
「えっ…え…アスラン…お嫁さんって…」

 キラの可愛らしく頬を染め、アタフタとうろたえる
様子に微笑んでアスランは続けた。
「だからそれまで誰にも君の身体を触らせてはダメだよ。
キラは俺だけのモノなんだから。」
「う、うん。」
 大胆なプロポーズの言葉に、キラはこくんとうなずく。

 こうして、キラは己の肉体が女であることを
隠して生活する事となった。

それ以来、学校からの帰りに二人はアスランの部屋で
交わるのが日課になっていた。
幸い、キラの身体の変化を誰にも悟られる事もなく、
二人だけの秘密…そうそれが、お互いをよりいっそう
燃え上がらせた。

(キラは俺だけのモノだ…俺だけがキラが女だと知っている…)

 何度も身体を合わせるようになって分かった事は、
キラが時折驚くほど淫らになることだった。
普段は今までと何ら変わりなく、奥ゆかしく慎ましい性格なのだが、
寝屋の中では時に大胆にアスランを求め、
自ら激しく手足を絡ませることもある。
これはアスランには発見だった、
この大人しいキラにこんな一面があるとは!

 だが、己の前だけにそんな淫猥さを見せるキラが愛しく思えて、
それがアスランの征服欲をさらに満足させ、
彼はより一層キラを深く欲するようになっていった。

「キラ…」

己の傍らで、疲れきった裸体を横たえ
肩で息をしているキラに向かってアスランは口を開いた。

「なあに?」
「実は俺…父さんから呼び戻されているんだ…」
「えっ!!」
 キラは驚いて起き上がり、アスランを覗き込む。
「来月にはプラントに戻らなければならない…」
「そんな…アスランがプラントへ…」
 アスランも上半身を起してキラの体を抱き締めた。
「父さんの命令には逆らえない…だから
…だからキラもプラントへ来ないか?」
「プラントへ?」
「ああ、そうすれば二人が離れ離れになる事もない。」

「でも…そんなこと…そんなこと出来ないよ。
父さんや母さんが許してくれるハズない。」
「…そうだな…俺達まだ子供だから…
親には逆らえないよな…でもきっと
きっと迎えに来るよキラ。」
「アスラン…」
「大人になったら…
キラをお嫁さんにするって言っただろ?」
「…うん」
「キラの身体は俺だけのものだ…俺だけが触れていいんだ
…必ず君を迎えにくる…君がどこに居ても必ず
迎えに来るから…だから…
だから待っていてくれるね?」

「うん、待ってるよアスラン。きっと迎えにきてね…
僕いつまでも待ってるから…」
 アスランはふいに思い出したように
ベッドの脇にある引き出しを開けた。
「……」
 それを不思議そうに見るキラへ、
アスランは取り出したそれを見せ
「これを…俺の変わりに持っていて欲しいんだ。」
「アスラン…これ…」
 アスランの手の中には可愛らしい鳥型の
ペットロボが乗せられている。
「昨日完成したんだ…トリィって名づけた。」
「トリィ…」
「ああ、俺がいない間はこのトリィを
俺だと思って待っててくれ。」
「うん…ありがとうアスラン。」

そうして幼い日の二人は、そっと唇を重ねて別れた。
きっとまた会える事を信じて…